フランスのデモはもうかれこれ1ヵ月近く続いています。
フランスへ旅行に来たら「ジレジョーヌ・黄色のベスト」のデモがあって、シャンゼリゼ通りには暴動があるし、デパートも閉まっていて買い物もできない、おまけに地下鉄の駅も閉鎖となっていて、移動もできないと、せっかくの旅行が無茶苦茶と嘆いているのではないでしょうか。
ニュースでも随分、フランスのデモのことが流れていますが、デモが始まってからもう一月もするのに、なんのためにまだデモをしているのと思っている方も多いのではないでしょうか。
ジレジョーヌは、生活困窮のせいでマクロン政権に対して「金持ち優遇措置をやめろ」と訴えて、フランスの道端に集まって粛々と抗議デモをしている人達です。
マクロン政権が今まで、聞く耳をもたなかったせいで、ジレジョーヌがシャンゼリゼ通りでデモをしたところ、「カッサー (物を壊す人達)」という若者達が、デモに便乗して商店街のショーウインドーを壊したり、車に放火をして、暴動を起こしています。
シャンゼリゼ通りの店舗も、大手デパートも12月はクリスマスシーズンで、売り上げを伸ばしたいところに、毎土曜日に閉店では倒産も免れない商店もでてくるでしょう。
政府はクリスマスで街を警戒するべきところ、このデモを早く収束したいと考えています。しかしジレジョーヌは政府の提案を受け入れず、まだデモを続けるのはどんな理由からなのでしょうか。
ジレジョーヌとはどんな動きなのでしょうか。
フランスでデモが収束しない理由

ジレジョーヌはフランス語で『gilets jaunes』と言い、黄色のジャケットという意味です。
このジレジョーヌのデモに参加している人たちは、生活苦に喘いでいる人たちです。
フランス全土でデモが続いて、ジレジョーヌはマクロンへ政権に対して、
- 自動車の燃料税の値上げを廃止
- 給与の最低賃金の値上げ
- 年金生活者のCSG(一般社会貢献税)の値上げの廃止
などを要求していましたが、官僚的と言われているマクロンさんは一向に応じませんでした。
マクロンさんがやりたくないというより、フランスは財政赤字立て直しの中、予算がひっ迫していて、国民に緊縮を理解してくださいという姿勢でした。
ジレジョーヌがデモを続ける理由
ジレジョーヌの人たちがデモを続けるのは、要求が聞かれないからですが、地方に住んでいる人たちにとっては、ガソリン代は生活費の中で大きな割合を占めるからです。
もともとお給料が良くないので、通勤にガソリン代がかかる上に、燃料税が上がったのでは、もっと生活が苦しくなります。
2019年から燃料税が上がる計画でしたので、廃止しろと要求していたのです。
要求をした背景には、マクロンさんが行った他の政策が片手落ちと批判したのもあります。
マクロンさんが大統領に就任したのは2017年の5月です。就任直後に、裕福層への税金の優遇策をしたことで、不満が出始めました。
ISFという富裕税があり、130万ユーロ(約1億7千万円)以上の資産をもつ富裕層への累進課税を廃止したのです。
これで、「マクロンは富裕層を優遇する大統領」というレッテルが貼られました。
これと並行して、年金生活者の年金に対してや、一般の給与所得者への、CSGという一般社会貢献税も上げるなど、給与などの収入の7.5%から9.2%に上昇、また年金へは6.6%からら8.3%の上昇で、貧乏人ばかりから徴収するなと怒ったのです。
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デモの被害が大きくなった背景
11月中からこのデモは始まりましたが、ジレジョーヌがパリのシャンゼリゼ通りで、大きなデモを呼びかけました。
シャンゼリゼ通りは、パリでも大手ブランド店が立ち並ぶ通りで、付近には星付きホテルもあります。
シャンゼリゼ通りが富の象徴と考えるジレジョーヌは、フランス全土から集まり、シャンゼリゼ通りでデモをすることにしました。
元々、ジレジョーヌの人たちは、商店のショーウインドーを破壊する行為をしていませんでしたが、カッサーという、物を破壊したり、放火などをすることでエネルギーを発散している若者がデモに便乗して、ことが大きくなっています。機動隊が動いても事態を収束できませんでした。
もともとは、穏健に行われていたデモでしたが、シャンゼリゼ通りでカッサーが、商店のショーウインドーを壊していったことで、12月1日のデモの被害が大きくなっていました。
この時点でも、マクロンさんが、ジレジョーヌの要求に応じなかったため、12月8日に再度4回目(アクト4)のデモをシャンゼリゼ通りで行いました。
内務大臣のカスタネールさんが、12月1日のデモを反省して、12月8日は、取り締まりを厳しくして、パリに到着するデモ参加者と思われ人達を、一時的に逮捕して警察に留置したのです。
それで、8日のデモは、カスタネールさんの作戦が功をそうしてか、被害は少なくてすみました。もちろんシャンゼリゼ通りや他の通りの商店、また自動車の被害はありましたが、それでも無防備だった12月1日のデモとは、比べ物にならない収束力でした。
マクロンさんの譲歩策
8日のデモの被害は最小限にとどまりましたが、カッサーも含めたパリや他の都市での被害は増える一方です。
それで、マクロンさんは以下の約束をしました。
- 自動車の燃料税の値上げを廃止
- 給与の最低賃金の値上げ
- 年金生活者のCSG(一般社会貢献税)の値上げの廃止
12月10日の夜に、マクロンさんが演説をして、上の約束をしたのはいいのですが、これらの公約をしたことで、予定税収が減収(10億ユーロなので、約1兆3千億円)です。フランスの財政赤字はますます悪化します。
しかし、ここまでしても、ジレジョーヌは納得していません。
ジレジョーヌが納得理由は?
マクロンさんが10日に言った内容の一つに、最低賃金を100ユーロ上げると言っていたのですが、この100ユーロは給与が100ユーロ上がるのはなく、一部が生活補助として拠出されからです。
マクロンさんの演説を聞いたひとは、よっぼどの税収に詳しい専門家でない限り、100ユーロの給与アップと理解したはずですが、違いました。
2019年の1月から、最低賃金生活者には確かに、100ユーロ多く貰えるのですが、そのアップする内容は、給料として約20ユーロで、残りの80ユーロがCAFという、社会保険庁から支給されます。
ということは、この80ユーロは、給与でないので社会保険の対象となりませんので、雇用者側は失業保険、健康保険料の対象になりません。
ですので一時的には多くもらえますが、将来の積み立ての対象にはならないことが判明して、ジレジョーヌは「馬鹿しているの?」と思ったのです。この演説は、見掛け倒しだとか、人を欺いているとまで言っています。
ただ、今のフランスにこれ以上の余力はないのが現状ですし、エコノミストは最善策ともいっていますが、ジレジョーヌは譲る姿勢を見せていません。
まとめ
フランスのデモの背景をまとめました。
ジレジョーヌに立ちはだかっている、働いても働いても生活苦から抜け出せない状況は100ユーロ上がっても、よくならないのが現状です。
また、それまでに、もっと早くマクロンさんが譲歩して、歩み寄っていれば、これほどまでに、ジレジョーヌの不満も大きくならなかったはずです。
ただ、以前の大統領のオランドさんは、平和路線の大統領でしたが、不人気で5年の任期でおえました。平和路線で「聞く耳があっても」この不景気を改善できませんでした。
明日の12月15日はデモ(アクト5)があると宣言されました。
これ以上続けば、観光収入はもっと減り、フランス経済の打撃は測りしれなくなります。
収入が難しい国ですね。