クリスマス時期に向けて、フランスへ旅行に来たら「ジレジョーヌ」のデモで、土曜日にシャンゼリゼ通りを散歩していたら、いきなり暴動を目にして、という方もあるかと思います。
「ジレジョーヌって聞くけど、なんですか?」と、なんで破壊活動をしている人たちがパリ市内にいるの?かと。
黄色いジャケットを着て、車に火をつけたらり、商店街のショーウインドーを割ったりするのを見て、外出するのを怖く思いますよね。
しかし、本来のジレジョーヌは、静かに「貧富の差をなくせ」とフランス政府に要求している人たちです。
ジレジョーヌとは何?説明したいと思います。
ジレジョーヌって何?
ジレジョーヌの意味は、フランス語で「gilets jaunes」と書き、黄色ジャケットの意味です。
車が故障した際に、道路で視界に入るように、夜にはこの蛍光の黄色のジャケットを着て修理をするように義務付けられています。

値段は、1着5百円くらいです。
なぜこの黄色の安全ジャケットになったかは、5年前のボネルージュに関係しています。
ボネルージュは「bonnet rouges」と書いて、赤い帽子の意味です。
5年前に同じく、税金の引き上げに抗議してデモがありました。
フランスは、とりあえずデモが多い国です。
ボネルージュに引き続き、赤から黄色に変わりましたが、このジレジョーヌの動きも、増税に反対するデモです。
抗議しないと生活ができないくらい、貧困化が続いているからです。
その辺が、イルミネーションいっぱいのパリのシャンゼリゼ通りとは対照的なのですね。
では、その貧困化している人たちの生活状況は、本当に苦しいものなのでしょうか。
ジレジョーヌの参加者ってどんな人?
ジレジョーヌは、ニュースで「破壊者」と流れてしまっていますが、元々は穏健派の人達です。
特に地方在住の人たちが関わっています。ジレジョーヌの掲げたスローガンは、「2019から始まる燃料税を廃止しろ」でした。
ボネルージュも、このジレジョーヌも、パリではない地方の人たちです。
地方は、車移動が多く燃料税が上がると、生活に響くからです。
パリ市内や郊外には、地下鉄やバスや郊外線がありますので、問題が直接的でないというのもあります。
首都と地方という言い方をすると、このジレジョーヌに参加した人達は、地方の貧困化に喘いでいる人たちです。
パリでも給与が低い人たちはもちろんいますが、地方では貧困層の人たちが、より郊外に追いやられて、通勤距離が長くなっているからです。
ボネルージュとジレジョーヌの関係は?
ボネルージュの動きは、2013年でした。前のオランド政権発足後1年半後ですので、同じく政権発足後1年半後のことでした。
政府の試みは、エコタックスという税金の導入でした。
3.5トン以上の重量貨物トラックに走行距離に応じて課税する対距離課金(エコタックス)制度でしたが、ブルターニュ地方の反対が強くぽしゃりました。
エコタックスで、税収を物流合理化を促進、環境負荷の軽減、交通渋滞の緩和を図るはずでしたが、反対運動が激しくなり、当時の、ジャン・マルク・エロー首相は断念したのです。
5年前のボネルージュの動きは、トラックによる農産品の輸送に依存するブルターニュ地域が中心になって強行に反対しました。
ボネルージュといえば、ブルターニュ地方でしたが、今回のジレジョーヌは、フランス全土にちりばめられ、決まった地域の動きではないという点が、ボネルージュとの違いです。
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ジレジョーヌの社会的状況
フランスを車で旅行すると、ホテルがどんどん閉鎖されているのを目のあたりにします。
日本もそうですが、過疎化が進んでいるのは小さな町ですが、中級の都市でも商店街が潰れていっています。
仕事がない、だから都市へ行くという構図は多くの国で目にしますが、フランスは特に、小規模のお店の税金負担が高くなっているのです。
大企業は、合法的に税金を如何に払わいようにするために、有能な弁護士を雇えますが、小さな商店は、方策のないまま税金に打ちひしがれて、潰れていっています。
そこに働く従業員は、一度解雇されるともうその町には仕事がありませんので、見つかれば隣の町に行って仕事をすることになります。
勤務先が何十キロも離れた場所になると、車通勤で使うガソリン代の負担が増えます。
値上げは、軽油がリットル当たり6.5セント、ガソリンは2.9セントです。ガソリン代は、車でバカンスにお出かけする趣味代ではなく、毎月の固定費です。
ジレジョーヌが怒る理由は?
貧困化が続いているから、なんでもストやら、デモやらをすればいいと思ってしているのではありません。
マクロンさんが就任したのは、2017年の5月で、その夏には税制政策で、裕福層への税金の優遇をしたのことから、不満が始まりました。
ISFと言って、富裕税と言われていますが、130万ユーロ(約1億7千万円)以上の資産への累進課税が廃止になったのです。
であれば、低所得者層にも同じに優遇措置があればよかったのですが、細かい、小さな値上げが続いています。
CSGという、一般社会貢献税が、給与などの収入の7.5%から9.2%に上昇、年金へは6.6%から8.3%の上昇。
このような、小さな負担増を低所得者層に強いて、裕福層にのみ優遇するとアピールした印象を強くもたせました。
不満を持つ他の理由に、マクロンさんの言いぐさが怒りを買うという面があります。
仕事を探している人に向かって、「飲食業は人手不足だから、道を渡って向こうへいけば仕事が見つかる」などとあっさり言ったりしますが、人手の足りない飲食業でも、経験がないと雇ってもらえません。
そんな現実的でないことを、わざわざ言って、市民の怒りを買ってしまいました。
それに加えて、7月に「べナラ事件」がありましたが、政府は市民へ緊縮財政だからと言って、税金を上げいといけないと言いながら、べナラ青年みたいな人へ、アパートの改装費に何千万円も払うなど、言っていることと、やっていることも違って、ここまでの爆発になってしまいました。
ジレジョーヌの要求は?
要求にはいくつかあります。
- 燃料税の値上げを廃止
- 給与(最低賃金の値上げ)
- CSG(一般社会貢献税)の値上げの廃止
11月中からこのデモは始まりました。
12月の最初の土曜日にシャンゼリゼ通りのデモは大規模でした。
ジレジョーヌの代表(いろんな地方からの寄り集まりという面もあり、代表者がはっきりしないのが、ジレジョーヌの特徴です)と話しの後、燃料税の値上げを一時中止するとフィリップ首相が譲歩のあと、マクロンさんが、廃止するとなりました。
破壊活動をした一部の人達の正体はジレジョーヌ?
ジレジョーヌは元々メッセージを伝え、社会を変えたいと思う人達です。
ですので、何かを壊して政府を脅しているわけではいのですが、デモに便乗して暴れて、物を壊す若者が確認されています。
この土曜日にフランス全土で、13万6千人のジレジョーヌがデモに参加。1723人が警察に検挙され、1220人が留置所にされた。 引用先 ヤフーフランス
また、破壊活動をする人達については、パリ郊外に住む若者と言っています。
デモがある度にデモに入り込み、車をひっくり返したり、ごみ箱に火をつけたらり、通行人を殴ったりと、何年も継続して行っている若者がいると、マリン・ルペン党首の国民連合所属の、ジベール・コラール(Gilbert Collard)さんは言っています。
この人たちは、実際に黄色のジャケットを着用していませんでした。
ただ、微妙にジレジョーヌの中にも強硬派がいて、破壊もあったとも伝えられています。
不満のたまっている若者のデモへの便乗は警察も手をやいています。
カッサーの取り締まりやデモの鎮圧には多くの警察官や機動隊員が骨をおりました。それが、いままで残業代が未支払いだったことなどで、押し殺していた感情も限界まできました。
警察官や機動隊員の不満が爆発して、波紋は波紋を呼んでいます。
まとめ
ジレジョーヌのデモの背景をまとめました。
参加している市民は、子供の代で仕事を無くす、また過疎化や合理化で失業になるのを恐れています。
働いても働いても生活が良くならないのに、一方で裕福層への優遇措置をするのは可笑しいと突き付けた行動です。
オランド前大統領は、平和路線を行く人でした。それでもあまりの不人気で、5年の任期で退きましたので、「聞く耳があっても」この不景気では、不満分子は増えるとも言えます。
この12月7日のデモで、政府は燃料税の廃止をするという譲歩をしました。
これも、強硬なデモが何度も続くまでに、貧困層の怒りを理解できなかったマクロンさんが、暴力沙汰になってから認めるという形になったのは、残念なことです。
以前からもっと話し合いをして、そこからお互いの譲歩があるべきでしたが、ジレジョーヌの要求は、まったなしで、毎週デモが行われています。
政府のジレジョーヌの対応に手をやいている背景の一つに、ジレジョーヌには代表者がいないことと、SNS戦があります。