フランステレコム(現オランジュという電話会社)で自殺者が相次いだ実態がニュースになりました。
この事件が明るみにでたのは、2009年の9月たったのひと月に間に5人の自殺者を出したことで、大きく報道されたのがきっかけでした。
それから10年後、再度裁判が始まり、自殺者を出した旧経営陣の責任を問われました。
今年の公判となるまですでに2009年から10年もの歳月が過ぎている背景には、自殺者を出した原因が会社側にあったのかを、証明することに難しさがあったからです。
フランスでもこのフランステレコムの自殺事件は、異例なケースと言われていて前代未聞です。CAC40(日経300の上場企業に匹敵)という一部上場企業が、フランス国内の全国レベルで社員の追い出しを行い、合計約60人もの社員を自殺へと追い込んだのですから。
会社のマネージメント、今後の一般の会社でも労働環境が良くなる方策がどうとられるのかが、気になるところです。
フランステレコム事件を見てみましょう。
フランステレコムで何が起こった?自殺者?

フランステレコムというフランスの通信会社で、2007年から約3年の間に従業員の自殺が相次ぎ、その数が約60人にもなりました。
フランステレコムの自殺者が相次いだ実態
その背景には、会社の経営陣からモラハラを受けていたからのですが、「フランステレコム事件」が事件として明るみになったのは2009年です。
報道された証言によると、実際には執拗なモラハラは、2004年から始まっていたのです。
自殺者が相次いだ実態と期間
現在はオランジュとう名前になっている、旧フランステレコムは、固定電話、ポータブルの販売も含めたフランスの最大手の通信会社です。
実際に自殺者が多発したのは、2007年からです。
フランステレコムの民営化と経営陣
フランステレコムは2004年から民営化へ向かい、経営陣は、22000人の人員削減を目標にあげ、執拗にモラハラを行い、左遷や閑職、転部、転勤をさせ辞職へと仕向けていました。
社員への執拗な追い出し工作は、当時のディディエ・ロンバール社長の号令で始まりました。
"En 2007, je ferai les départs d'une façon ou d'une autre, par la fenêtre ou par la porte" 引用元 フィガロhttp://www.lefigaro.fr/flash-actu/
2006年の10月に、管理職会議で、「2007年には窓からないしは、ドアから追い出してやる」という意気込みを社長が堂々と宣言したのでした。
どのような形でも、22000人の人員削減を決意し、その結果モラハラが始まり、その結果、2007年から3年で57人の自殺者数があったことを、フランステレコムの組合が公表したわけです。
同時に産業医(フランスでは各社員が医師から健康診断を受けるときの行先が産業医です)、労働監督署も入り、裁判での資料として使われたのです。
風当たりが強くなった、ロンバール社長は、2010年の3月に経営陣から退きました。
フランステレコムはCAC40(フランスの上場企業トップ40)で初めて、モラハラで裁判沙汰を起こした企業というレッテルが貼られました。
フランステレコム側の論理とリストラ
このリストラをした背景には、フランステレコムは当初は国営企業だったことがあります。
国営だったフランステレコムは、2004年に国の資本出資率が5割を切り、民営化されました。
国際競争の矢面にた立たされて、テレコム事業の改革をすることになったと、前ロンベール社長は弁明していました。
ところが、この国際競争になか勝ち抜くための改革実行を行ったいたというものでもなかったという証言も出て来たのです。
「Envoye Special アンヴォワイエ スペシャル」というフランスのテレビ番組で、2009年の9月に報道されたフランステレコム事件では、国際競争に中生き残りをかけて、約2万人の社員を削減をしたのではないというものでした。
この番組では、実際にモラハラが始まっていたのは2004年からだったと説明されていました。
であれば、2007年から2009年までの2年間ではなく、5年間モラハラが続いていたことになります。
番組の中には、旧フランステレコムの営業支店長クラスの責任者が、2004年にある会議で、22000人の社員を追い出さなければ、ボーナスが出ないことになると言われれいたと証言していました。
ボーナスが欲しければ、追い出しを行えというものでした。
国際競争に勝つためのものではなかったということです。
表向きは、激化する国際競争のなか生き残るために、人員削減をするとは言っていたのですが、実情は、一部の社員へのボーナスの支給のために、人員を削減するものだったのでした。
追い出しを行わなければ、自分自身が追い出されることになるのは、皆承知していたということです。
標的となった社員には、誰も口をきかなくなり、孤立させて辞職に追い込む手法もあったということでした。
【動画 Envoye Special アンヴォワイエ スペシャル】↓
人員削減の標的になったプロフィール
標的になった社員のプロフィールは、主に公務員の社員でした。
フランステレコムは1988年に仏電電公社から切り離されて、1991年にフランステレコムなりました。
社員数約10万人の従業員、そのうち65%は公務員で、平均年齢も高く48歳と高めでした。
フランスでは公務員の解雇はできませんので、人員削減は辞職を促す形で行われたということです。
辞職へ追い込むためには、中間のマネージャーが執拗にモラハラを行っていたということです。
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モラハラを行う側とされる側の両者のモラハラ
解雇できない人員の削減を行うための、モラハラの内容は、多義にわたったいました。
先ほどの動画では、どのようなモラハラが長期間行われていたが証言されていますが、対象社員に対して、
- 左遷
- 転勤
- 閑職
- 配置転換
- 過度な仕事量の押し付け
などを行い、自主的に退社するように仕向けました。
人事部が中間マネージャー4000人を選び、彼らが、対象者を追い詰めていくと手法を取ったとされています。
選ばれた4000人は、支店長クラスの管理者、また中間管理職で、左遷や転勤を命じていったのでした。
自殺者の中には、フランステレコムのビルから飛び降りた自殺をした人もいました。
自殺者数は数字に出ていますが、精神疾患になった社員数は広く公表されていません。
具体的なモラハラは、人事部に呼び出され、1対1で人事部で、2時間半の間、
- 無能
- 生産性が低い、
- おまえはダメな人間だ
などとまで、先ほどの証言した男性は、毎週言われ続けたということでした。
そして最後には、閑職用に用意されたテーブルと椅子のみがある事務所が用意され、そこに1日中、テレビカメラで監視されていたのです。
また、給与明細には、いままでマネージャーとタイトルが明記されたいたのが、それも外され(これはフランスでは違法です)、最後には、会社に出勤しても、社員証が無効になり、会社のビルに入れないようにされたということでした。
左遷はもちろん、閑職扱い、または遂行できない業務目標を与えるなど、追い詰めるためには、ありとあらゆることを行ったということです。
転勤後に、全く新しい、未経験な業務をさせられ、業務内容や、業務態度をコンピューター画面で監視されているなどは日常的で、できないときには、呼び出しをうけて、指導をさせられるというものでした。
そうして、すこしずつ自殺者がでていったのでした。
言う側の中間管理職の中にも、耐えれずに、辞職した人ももちろんいますし、先ほどのインタビューに答えた男性は、会社を訴えるために、辞職して裁判での証言へと進んだのでした。
事件後のフランス企業のマネージメント
フランス中を震撼させた事件です、「バーンアウト」と言い方もできました。
会社から耐えがたいモラハラを受けて、病欠が増えているのが現状です。
事件後には、企業は表向きの改善策を取っています、しかし社員の病欠は減ってきていないのです。
企業が新しく取った措置と病欠
この事件の後は、まず「バーンアウト」という言い方ができました。
英語なのですが、燃え尽きという意味です。
フランステレコム以外でも社員が、モラハラを長期間受けて、出社できなくなり、産業医に診断を受け、病状を訴えて薬を処方して貰うこと、また病欠に入る社員が増えています。
フランステレコムの社員が直面していた2004年から2009年まので時代は、社員は病欠がまだあまり認められない時代でした。
事実、精神的不安定になっていても、出社していたのです。
しかし、勤務中にモラハラを受けて、最後には自殺へと追い込まれてのですから、この事態を重く受け止め、医師や社会保険庁は、社員を会社から遠ざける方法として、「病欠」扱いをする風潮が認められたのでした。
病欠が認められれば、その期間は給料の一部が支給されます。病欠中に精神科医で診断を受け治療もできます。
風潮が変わり、企業は労働環境を良くするために、
- 社内に相談室を設ける
- ヨガやフィットネスをりようできる環境を設置
などを設置はしました。
とはいってもこのような空間を設置できるのは、大企業に近いです。
疲れや、ストレスに対し、このようなヨガや瞑想ができれば、ストレスを減らせることにはなります。
現在病欠の割合について書かれていた記事の抜粋です。
2010年から2016年の間に、民間企業で病欠は6%増えた。 国営企業では2007年から2016年には28%増えた。 公務員の44%が年に1度は最低病欠している。(調査機関はSofaxis) 参考資料 ヴァンミニュット 病欠
とあります。
フランステレコムの事件後も、労働環境は改善されていないからか、社員の病欠の割合は減っていません。
あれだけの事件があったのですから、企業が社員の労働条件の改善をするのは必須であったはずです。
大企業では特に、社員がリラックスできる環境を整えて、設備も増やしたとはアピールされていますが、実際には社員のストレスは減るどころか、増えているのが現状ということです。
まとめ・悩む前に
フランステレコムの社員削減策で起こった悲惨な事件でした。
長々と書きましたが、他人事ではない事件で、私も、私の友人もモラハラに遭いました。 今時遭っていない人が少なくなっているのも現実だと思っています。
フランステレコムの事件は、社員の方が公務員であったのに、こんな事件と発展した異例な例ですが、民間だからいいというわけいにはいかないです。